『隣接地の所有者が、境界立会してくれません!』
というのは土地家屋調査士の実務では、頻繁に耳にします。
いわば、これが土地家屋調査士の最大の課題であり、この点を隣接者様にきちんと説明してご理解していただくのが私達の責務であるとも思います。
では実際にどんな事を言われるのか経験を交えてお話しします。
■うちには関係ない!
→ こう言われる事はかなり多いです。境界立会はお互いの協力関係の上になりたっており、いつ逆の立場になるか分からないですし、境界を確認することは土地の管理上有益な事ですとお伝えすれば、概ねご理解いただける感じです。
■なんで、隣の人の為に大事な時間を使わなければならないの?
→ こう言われる場合は、依頼人と隣接地の所有者との関係があまりよくない時が多いです。こんな場合は、過去の経緯などをお聞きし、依頼人と土地家屋調査士が理解した上で、再度丁寧にお願いするしかありません。
■よく分からないので怖いから嫌です!
→ 一生のうちで何度も境界立会をする人は、少数だと思います。よく分からないから不安と言われる方は一定数いらっしゃいます。完全に立会を拒否すると筆界特定制度や裁判を利用したりすることになり、より難しい問題に発展するので、これも丁寧に真心を込めてご説明し不安を取り除いてあげるしかありません。
■境界は元々決まっているんだから、立ち会う必要がない!
→ 元々決まっている境界も工事等で境界標がずれてしまっていたり、無くなってしまっていることもよくあります。土地家屋調査士が日頃行っている境界確認作業は、測量器械やCADを使い、既存の図面と現地の状況を比較し、問題がないか確認しています。既存の境界がある場合でも境界立会を行い、現地の様子を確認いただき、後の工事や相続等での引き継ぎの際に役立つ境界標の写真や図面をお手元に残して頂く事で、将来的な安心を提供できるとお伝えしご理解頂いています。
■ずっと木がはみだしてきていて、葉っぱはこっちで片付けてるんだよ!都合のいい時だけお願いするな!
→ 隣接地なので、樹木や建造物の越境や騒音問題等様々なトラブルがどうしても発生してしまうものです。知らず知らずのうちに隣接地の所有者を怒らせていて、境界立会のお願い行った土地家屋調査士にその思いを吐き出されるケースは良くあります。土地家屋調査士の私が謝って済む問題ではないのですが、平身低頭接してご理解を頂くしかありません。境界立会のお願いに行って思いもよらない事を言われる事は多々ありますので、日頃の隣接地の所有者との関係が良好であることが望ましいです。
■昔、こちらの境界立会のお願いをお宅のお父さんが拒否したので、相当苦労した。今更都合良くないですか?
→ これは最悪なケースの一つです。隣接地の所有者が協力しないのは当然と言えば当然の話です。親同士が揉めていた土地の場合は、代が替われば上手くいく場合もありますが、この場合は直接拒否された方がご健在で、依頼者のお父様は亡くなれていて息子さんは経緯を全くご存じありませんでした。この時は依頼人である息子さんが、当時の件をお詫びに行って何とかご協力いただきました。
色々書きましたが、このようなケースは一部の例であり、通常は快くご協力頂ける方がほとんどです。こちらの説明をご理解頂き、快くご協力頂ける方の為にも誠実に業務に取り組んで行かなければと日々心に刻んでおります。
私自身土地家屋調査士を何年も行っておりますと、隣地との争いでもったいない時間や費用を使い、それに伴い精神的負担を被った方を多く見てきました。土地の境界は基本的には自己管理です。帰省で実家に帰った時など大切な土地を守るという意味で、ご家族で境界について話しをされることもとても大事な事と思います。また、“隣接地の所有者とは仲良く”が色々な意味で良いことだと思います。
お困りの時は、お近くの土地家屋調査士にご相談されてください。